責任を持たないということは責任を押し付けるということだ
※この話はフィクションです。
ここに2つのチーム(甲と乙)がある。
それぞれのチームに、営業担当と技術担当がいる。
技術担当は営業から言われた仕事をこなし、営業は外からの要望を技術に伝える仕事をしている。
基本的には甲と乙は独立しており、それぞれ営業と技術が会話をして仕事をこなしていいる。チームの関係性としては、やや乙チームの方が強いと考えていい。
あるとき、乙チームが甲チームと連携して仕事をしたい、と言い出した。言い出した人は、甲と乙チームの更に上のチーム(松チームとしよう)のメンバーだ。
乙チームの営業が取ってきた仕事を、甲チームでもノウハウを貯めるために把握しておきたい、ということだった。
そのためには、以下のアプローチがある
- 乙チームの営業が、甲チームの営業担当と連携を取る
- 乙チームの営業が、甲チームの技術担当と連携を取る
- 乙チームの技術が、甲チームの営業担当と連携を取る
- 乙チームの技術が、甲チームの技術担当と連携を取る
しかし、甲チームの技術担当は癖が強く、自分の営業担当と喋る以外は無口になってしまう。また、営業同士は非常に仲が悪い。
ということで、3以外の連携方法がない、ということになった。
連携を取る、ということが決まったものの、更に問題が生まれた。
誰がどうやって連携を取るのかが決まらないのだ。
- 甲チームの営業は非常に忙しいので、受注した仕事内容をいちいち説明するのが大変。概ね伝えることはできるが、漏れることがある
- 乙チームの営業と甲チームの営業の連携は必須なので、そこは乙チームの技術が頑張って欲しい
- 甲チームの技術担当は非常に気難しい上に多忙なので、そこから情報が入ることはないと思ってほしい。その情報が知りたい場合は営業担当に聞いてほしい
- 甲チームは、基本的に乙チームの仕事には興味がない。乙チームが甲チームに興味をもつのは勝手だが、こちらに迷惑はかけないでほしい
- 甲チームと乙チームが連携する、というのは松チームが決めたことなので、逆らえない
今回の連携で、新規案件を受注した場合、乙チームの営業担当→乙チームの技術担当、というルートの他に、乙チームの営業担当→甲チームの技術担当のルートが生まれたわけだが、このルートが必ず信用できるわけではない。よって、乙チームの技術担当は、定期的に甲チームの営業担当に話を聞きに行かなければならない。
彼らはslackやchatworkなどが使えないので、連絡手段はメールか電話だ。非常に効率が悪い。
その上、松チームは連携は素早くしなければダメだ、と強く主張している。(そもそももっと上からオリてきた話だ、とも言う)
そして、甲チームの技術担当は、新規案件が来たかどうかを乙チームに確認しに行かなければならなくなり、甲チームの営業担当とのやり取りも希薄になっていく。甲チームの営業は、案件情報を聞くために甲チームとの技術とやり取りをしに行かなければならない。
本来、上からの命令ということで、それに従わなければならないはずが、すでに出来上がっているチームの関係性が邪魔をしている、という状況が起きているわけだ。
新規案件の情報や、進捗を確認するには、乙チームの技術担当に話を聞くのが早い。しかし、甲チームから乙チームの技術担当に話を聞くのは無理だ。乙チームからすると、甲チームのほうから案件があった場合は声をかけてほしいと思うのだが、それもできない。
松チームのメンバーは「乙チームの立場は弱い。まずは自分たちが責任を持って、話を聞きに行くべき。相手から連絡がなくとも、定期的に連絡を取っていくのは義務」ということになってしまうのだ。
そして、お互いのチームが疲弊していく…